インサインサイド・マン』

黒人映画を撮り続けてきたスパイク・リー監督の社会派サスペンス. とにかく脚本のおもしろさが絶品の映画でした. 黒人差別に対する猛烈な批判メッセージもなければ、黒人を煽るようなものは一切ありませんが、とにかく社会派サスペンスとして一級品の映画だと断言できます. 銀行強盗を計画及び実行するクライヴ・オーウェン、その事件の解決にあたる刑事デンゼル・ワシントン. そして銀行の経営者クリストファー・プラマーの依頼により事件に一枚咬む弁護士ジョディ・フォスター. まずこの実力派俳優たちによる演技合戦にスクリーンから目が離せないだけでなく、単なる銀行強盗犯と警察の対決に見せず、常に弁護士や銀行経営者が絡む「何か」を中心に三すくみのような構図で見せているところが秀逸なんですよね. つなりどのように対決が進むかではなく、その「何か」とは何か? その「何か」を探す真の目的は何なのか? そして50人の人質を共犯者にする意味とは? またこの映画を見終わった後にタイトルである「INSIDE MAN」という言葉の意味深さにも感服してしまいます. 「銀行の内部にいる者」つまり銀行強盗、「銀行の内部情報を知る者」つまりは経営者や弁護士、そして「自分自身の中にいるもう一人の自分」つまりこの事件に関わることとなったデンゼル・ワシントン演じる刑事. この一つの事件に関わる全ての人間が「インサイドマン」という言葉で表現されることが分かった時のあの衝撃はたまりませんでしたね. 脚本の素晴らしさだけでいえば、同じ立て籠もり犯罪を描いた映画『交渉人』よりもおもしろかったのです. そして『エニイ・ギブン・サンデー』でベトナム戦争関連映画から卒業したオリバー・ストーン監督のように、スパイク・リー監督もこの映画で黒人関連映画から卒業するのかなと思いました. 深夜らじお@の映画館 は基本インドア派です.